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デザイン思考 | 0から1を創るイノベーション入門

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ここ最近「デザイン思考」について勉強している。きっかけは、知り合いのデザイナーの話だったり、UXデザイナーがやっているPodcastの番組を聞いていたので、そのあたりから興味が生まれたのだと記憶している。

 

で、備忘の意味も踏まえて、 「デザイン思考」とはどんなものか? について、さわりの部分を簡単にまとめてみた。

 

なお、この記事は 著:中野明『超図解 「デザイン思考」でゼロから1をつくり出す』の内容からのまとめ。記事内でこの本のネタバレを含むので、これから読もうとしている人は気をつけて欲しい。

デザイン思考について

「デザイン」について  

 まず、「デザイン」という言葉について定義しておこう。

 この本では、以下のように「デザイン」を定義している。

デザインとは、

生活のために必要とするいろいろなモノを創るための総合的な計画や設計

平凡社 『現代デザイン事典』より一部改訂

 

現代デザイン事典 2016年版

現代デザイン事典 2016年版

 

  

この「生活に必要ないろいろなモノ」は、デザインの典型イメージである広告やポスターや、有形なもののみを指すものではないという。

 

著者は、「デザイン」の対象となるモノについて、マーケティングの父であるフィリップ・コトラーのマーケティング理論を題材に説明している。

 

 「デザイン」の対象は以下の10種類です。

  • デザインの対象:財、サービス、イベント、経験、人、場所、資産、組織、情報、アイデア

フィリップ・コトラー - Wikipedia

 

つまり、デザインとは計画や設計のことで、

デザインの対象は、顧客のニーズも満たすあらゆるものとなる。

 

「デザイン思考」とは

前述した、「デザイン」と「思考」という言葉が合わさったのが、「デザイン思考」となる。この言葉を著者は、次のように定義している。

デザイン思考とは結局のところ何なのかー

 イノベーションを生み出すために、卓越したデザイナーの思考法を活用すること。

 

デザイナーは、クライアントが依頼してくる漠然な注文を形のあるものに落とし込み、結果としてクライアントのニーズを満たす仕事をしている。少なくとも私の中でのデザイナーの仕事の定義はこうだと思っている。

こういった、デザイナーの仕事術のようなものを、他の業界業種でも応用できるようにパッケージ化したものがデザイン思考なのだろう。

 

デザイン思考が注目されている理由

デザイン思考の目的

デザイン思考は2,000年初期ころから、注目されるようになったらしい。

 

デザイン思考を用いた代表として、最もその中心に位置するのが米国のデザイン会社IDEO。このIDEOという会社が、「デザイン思考」という、1種のバズワードの火付け役となった。

 

IDEOが、新商品開発のためのアイデアを出すためのー もしくは、数々のイノベーションを起こすために、IDEOのデザイナーたちが毎回繰り返しているプロセス(≒フレームワーク)の総称を、「デザイン思考」と呼ぶようになったらしい。

IDEO - Wikipedia

 

これら、「卓越したデザイナーの思考法」はどのような場合に役立つのか?

  

それは、革新的な手段や方法、いわゆるイノベーションが必要とされる分野だ。

 

www.buildinsider.net

 

イノベーションの必要性

著者は、現代のビジネスには過去の成功事例を真似しているだけでは良かった時代は終わったと述べている。

 

 たとえば、かつては「モノ作りは日本のお家芸」などと言われたものです。しかしいまやモノ作りの拠点は海外に移転し、「お家芸」などと言うのがおこがましい時代です。

 落日の典型が家電業界や家庭向けゲーム業界でしょうか。すでにサンヨーの名は世の中から消え、シャープの経営危機は続いています。あのソニーでさえ輝きを失い、任天堂の売り上げはつい先程まで下降するジェットコースターのごときものでした。

 

 上記は、アジア企業の低コスト化による日本企業への弊害だ。このアジア企業がとった経営戦略をコストのリーダーシップ戦略と呼ぶ。 日本企業もコストのリーダーシップ戦略、つまり徹底した低価格戦略で勝負する場合、良いものを安く提供するために、技術開発や効率化をはかることこそ、最大のミッションとなった。

 

しかし、低コスト化を巡る競争は、急激に力をつけてきた途上国の台頭により、血みどろの競争、不毛な消耗戦となった。(このような低コスト化路線での競争をレッドオーシャンを呼ぶ。)

レッドオーシャン(レッドオーシャン)とは - コトバンク

 

この競争路線で勝負することにはたして意味はあるのか? 勝機はあるのか? を考えた場合に、もっと競争相手の少ない別の路線、さらには自らで新しい路線を開拓することができればとなる。全く別の路線ならば、不毛な消耗戦を強いられることもなく、少ないパイを奪い合うことはないだろう。

 

そこで有効なのは、差別化戦略。この差別化戦略のために、従来の秩序を壊す「イノベーション」が求められる。

 

そして、「イノベーション」を行うために有用な手段として「デザイン思考」が注目されている。

イノベーションの定義  技術競争の争いから脱退する 

差別化戦略について、イノベーションが必要なことはわかった。ただ、イノベーションの定義とは何だろうか?

 

著者は、このイノベーションについて以下のように定義している。

 

 イノベーションとは、

 

 無価値なものを価値のあるものにする活動 

 

 もっと広い意味でとらえるならば、「価値の低いものをより価値の高いものにする活動」、また「その活動による成果」とも言えます。

 

 そしてこれが「ゼロ」から「1」をつくる本当の意味です。つまり「ゼロ」とは「無価値なもの」、「1」とは「価値のあるもの」の抽象的てな表現にほかなりません。

 

この「価値の低いもの」を「価値の高いもの」へする活動は、差別化戦略のための大きな鍵となる。この活動に、 卓越したデザイナーの思考法が有効とされているようだ。それはなぜか?

 

 それは、従来の企業活動で疎かにしていた要素をデザイナーの思考法では汲み取ることができるから

  

デザイン思考の手法

人間中心のアプローチ

前述した、従来の企業活動が疎かにしていた分野について説明する。

 

著者は、IDEOの経営層が記した、著書『クリエイティブ・マインドセット』から、イノベーションの実現には次の3要素が必要と述べている。

イノベーション実現の3要素:

  1. 人間(有用性)
  2. 技術(技術的実現性)
  3. ビジネス(経済的実現性/持続可能性)

  

クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法

クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法

 

 

しかし、従来の企業活動では、3要素に対するアプローチに偏りがあった。

「イノベーション」は「技術革新」と誤訳(とくに、われわれSEのような職業では特に)されるように、技術革新に重きを置いた傾向が強い印象だ。技術力やビジネス力を高める活動に注力することはあっても、有用性についてのアプローチはほとんど行われていない。

 

一方、デザイン思考の中心は常に人間(有用性)となる。

 

記憶に新しいものところでは、「iphone」、「Uber」がイノベーションのシンボルだろう。あと、これをイノベーションと呼べるのかは不明だが、IKEAの「人をダメにするフォア」も個人的には画期的なアイテムの1つだと思っている。

  

 この「人間中心のアプローチ」を「デザイン思考」では行っていく。

 

「デザイン思考」のアプローチ

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「デザイン思考」では、まず人間を中心に有用性を考えて、次に技術的・経済的な実現性を探っていくというアプローチをとっていく。

 

しかしながら、「デザイン思考」には完全に固まったフレームやアプローチはない。

 

『超図解 「デザイン思考」でゼロから1をつくり出す』では、多様な論者に共通するデザイン思考の手順を4ステップでまとめている。

 

 1. 現状を深く「観察」して共感する

 2. 「正しい問題」を見つけ出す

 3. 「解決策」を大量に創造する

 4. 失敗を前提に「アウトプット」を繰り返す 

注:一部改訂

 

私自身はまだ、これらの手法について十分に腹に落ちてはいない。詳細については、今後の課題とし、それぞれ別の記事としたいと思う。

 

『超図解 「デザイン思考』で、それぞれについて具体的な方法が書いてあるので、気になる方は、ぜひ手にとって確認してみると良いだろう。

さわりの部分についてのみ、簡単に引用で紹介する。

 

1. 現状を深く「観察」して共感する

 デザイン思考でまず実行すべきことは、人が行動する様子を深く観察することです。そして単に行動を観察するだけではなく、その人になりきり共感しますー

 

2. 集束思考で「正しい問題」を見つけ出す

 次に観察から得た情報を集束思考で統合します。この統合作業を通じて、対象とした人たちはどのような問題や課題、ニーズを抱えているのかを明らかにしますー 

 

3.  発散思考で「解決策」を大量に創造する

  続いて発見した問題に対して、どのような解決策を提供できるかを考えます。問題に対する究極の解決策を一発で見つけ出せることはまずありません。したがってここでは、発散思考を用いてより多面的な解決策を大量に発想することが重要になりますー

 

 4. 失敗を前提に「アウトプット」を繰り返す

 解決策の方向が決まったら即座にプロトタイプを作成します。その際には、「手軽」「低コスト」「短時間」が重要になります。プロトタイプはアイデアを洗練させるための土台ですー

 

超図解「デザイン思考」でゼロから1をつくり出す

超図解「デザイン思考」でゼロから1をつくり出す

 

 

まとめ

「デザイン思考」では、競争の差別化が目的だ。競争の差別化のためには、従来のコスト削減競争の路線ではなく、人間中心の有用性路線でのアプローチが有効な手法の1つとなっている。

 

平たく言えば、「デザイン思考」とは、作り手側がフィールドワーク(ユーザと行動を共にする)を行い、そこから課題を見つけ、それを技術的、経済的要素で解決していくアプローチのことだろう。

 

私自身、今後、この「デザイン思考」を使って何かをするかどうかはわからない。

現職では企画側の立場にはいないので、職場ではこれを使う機会は無いかもしれない。

 

ただ、今後、自分でWebサイトやアプリケーションを作ろうという時に、役に立つかもしれないので、「デザイン思考」の大枠を掴むまでは勉強していきたいと思う。